●ストーリー#2
(2017.9.30 第3回イベント朗読劇)


『 行徳丈一ぎょうとく じょういちの幻影 』



登場人物

小松川明日風―――cv:山本希望
船堀迎――――――cv:佳村はるか
タマーラ・アリア・瑞江・アンドロポポフ(タマ)――cv:谷口夢奈
篠崎夢見―――――cv:鈴木亜理沙
本八幡有菜――――cv:髙山ゆうこ
菊川陽乃―――――cv:榎吉麻弥

葛西光牙―――――cv:檜山修之

行徳丈一―――――cv:森久保 祥太郎





●夕方、屋外の堤防スタンドにて
(訓練後に、有菜・光牙を除く5人が話しているシーン)



明日風「つ、疲れた~。もう一歩も歩けないよ~」

夢見 「あはは。それにしても、今日の訓練もハードだったね…」

明日風「葛西司令官は、いつも訓練メニューをみっちり組むくせに、自分は見てるだけじゃん。 訓練後に『ひとっ走り行ってくるわ!』って、ランニングしに行った有菜姐の方がすごいんじゃない?」

迎  「そうね。でも、葛西司令官は、オーディーン隊での現役時代に 『エースパイロット』と言われていたらしいわよ」



夢見 「あ、その話、私も前にお爺ちゃんから聞いたことがある。普段は人をあまり褒めないお爺ちゃんが『葛西光牙の操縦技術は超一流だ』って言ってたから、よく覚えてるんだ」

明日風「え~? 本当かな~?」

陽乃 「夢見さんのお爺様は、この研究所で一番古い整備士さんですから そのお言葉は信頼できますわね」

夢見 「しかも、その当時は、葛西司令官だけでなく、 もう一人、エースパイロットがいたみたいで、その人もすごかったらしいよ」

明日風「え!? そのもう一人って誰、誰?」



タマ 「てか、あんた「行徳丈一」さんを知らないの? 行徳さんはね、あの憎たらしいドエース司令官よりも何倍も優れていて、 操縦の腕前も人柄も、それはそれは素晴らしいお方なのよ!」

迎  「それで、その行徳さんという人は、今どこに?」

タマ 「それが、2年前の戦闘中に亡くなったらしくて…。 あと、噂なんだけど、行徳さんは、有菜姐と付き合ってたみたいなのよね」

明日風「え~っ!? あの有菜姐と!?」



陽乃 「でも、行徳さんのご遺体は見つかっていないそうなので、 【行方不明】という言い方の方が合っているとわたくしは思います。 それに、もし本当に有菜さんとお付き合いをされていたのなら、 有菜さんにとって、これはかなりデリケートな話題ですわね…」



(そこへ、光牙がやってくる)

光牙 「どうしたお前ら? まだ帰ってなかったのか?」

迎  「あ、葛西司令官」

明日風「ちょうどいいところに! 今私達、行徳丈一さんって人のことを話していたんです」

光牙 「なに? 丈一の話だと?」



タマ 「行徳さんって、ドエース司令官と同じくエースパイロットだったのよね?」

光牙 「おいタマ! 上官には敬語を使えって、いつも言ってるだろ! まったく…。 ま、それは置いといて、丈一が俺と同じエースパイロットだったというのは ちょっと違うな…」

タマ 「え?違うの?」

光牙 「丈一より、俺様の方が何倍もすごいエースパイロットなんだ! 比べ物にならないくらいになッ!」

タマ 「あ~。はいはい…」

(有菜が訓練後の自主トレ(ランニング)から戻ってくる)
(有菜が少し離れた所から、みんなを見ているシーン)



有菜 「ふ~、いい汗かいたな。お? あいつら、あんなとこで集まって何やってんだ?」

陽乃 「それで行徳さんは、どんな方だったのですか?」



有菜 「え? 行徳…?」

光牙 「あ? あぁ…。あいつはいつも細かいことを言ってくる奴でなぁ…。戦場でも、俺はいつもあいつに小言を言われてたよ・・・」


----光牙回想シーン----



行徳 「おい!光牙! 熱くなりすぎるなといつも言っているだろう!? 冷静に状況を把握しなければ、勝てる戦いも勝てないぞ!」

光牙 「ちょっと俺が報告書作成の合間に休憩した時もよ…」



行徳 「光牙! どうして仕事を放り出して遊んでいるんだ!? 仕事は期日までに終わらせろといつも言っているだろう!?」

光牙 「俺が整備を終えた後にもよ…」



行徳 「光牙! モーターの整備で使った工具は、ちゃんと片付けろって言ってるだろ!  何度言ったら分かるんだ!」

----光牙回想シーン終了----


光牙 「・・・とか、マジで口うるさい奴でよ~」



タマ 「それって、もうドエース司令官のお母さんみたいじゃん!」

陽乃 「行徳さんは、大変な苦労をされていたんですね…」

夢見 「お爺ちゃんも、『葛西光牙はだらしなさも超一流』って言ってたっけ…」

光牙 「ちょっと言いすぎだぞ、お前ら…」



光牙 「ま、丈一はそんな細かい性格の奴だったけど、 操縦テクニックは、エースである俺の次ぐらいに良かったのは認めるよ。 ただ、2年前の戦闘でよ…」




行徳 「光牙! ここは俺に任せろ! お前は負傷した有菜の帰還を誘導してやってくれ。 大丈夫、お前が戻ってくるまで、ここは俺が食い止める!」




光牙 「とか言って、格好付けやがってよ…。その後、行方不明になっちまった…。 けど、あいつは必ずフラッと戻ってくるはずだ。有菜のためにも、必ずな…」


(話が一段落したところを見計らって、有菜が合流する)

有菜 「いやー、疲れた疲れた。あれ?みんなで楽しそうに、何の話をしてんだ?」



迎  「あ、あぁ、有菜姐。お疲れ様・・・」

夢見 「お、お疲れ様です・・・」

タマ 「な、何の話って…ねぇ、陽乃」

陽乃 「えぇ。訓練の復習を皆さんとしていたんですよ。そうですよね、明日風さん」

明日風「そそそそそ、そう! 有菜姐が気になる話なんて、誰もしてないよ!?」

光牙 「ほ、ほら、お前ら。明日も朝から訓練なんだから、もう帰れ!」

明日風・迎・夢見・タマ・陽乃 「はーい」


(皆が帰って行くのを待ってから…)

光牙 「おい、有菜。さっきの話…聞いてたか?」

(光牙の問いかけを遮るように)

有菜 「さーて、わたしも明日の朝練に遅刻したらまずいし、もう帰るわ。じゃあな」

光牙 「お、おう…」




●夜更け、有菜の自宅にて
(丈一とのツーショット写真を見つめながら)

有菜 「丈一…」



(写真当時の行徳との言葉を思い出して…)

行徳 「有菜、「手ブレ」しないようにちゃんと撮ってくれよ」

有菜 「任せろって。じゃ丈一、撮るぞ。あははは」

(カメラのシャッター音:カシャッ)



(シーンが有菜の部屋に戻る)

有菜 「丈一…会いたいよ…」





●光牙の夢の中
(砲撃音・建物が崩壊する音)




光牙 「おい!明日風! 迎!大丈夫か!? 二人とも返事をしろ!」





光牙 「くそっ…。一体どうなってやがんだ…。全然訳分かんねーぞ」




行徳 「久しいな、光牙」

光牙 「そ、その声は…。まさか……。」





光牙 「丈一…!?」



●研究所内にある仮眠室にて
(光牙が夢から覚める)

光牙 「っ…! 夢…か…。チッ…。明日風たちと丈一の話をしたせいで、嫌な夢を見ちまったぜ」



(ビーッビーッビーッ 警報音が鳴り響く)

光牙 「敵襲か!?」

(光牙が走って行く音)



●戦場へ
(モーター音)

陽乃 「こちら陽乃。現在、ヴァルキリーチーム全員で目標地点まで移動中。葛西司令官、敵の情報をお願いします」

光牙 「あぁ。それが、ここからだと敵の情報がはっきりしない。 未知の敵と接触することになるから、みんな気を引き締めていけ!」

タマ 「分かったわ」

夢見 「了解しました」



(敵影は、丈一の姿をしている)

迎  「敵が見えてきました。映像を転送します。」

明日風「あれは…人?」



有菜 「そんな…まさか!? あれは…丈一!?」

光牙 「なんだと!?」



明日風「え、え? あれが行徳さんなの?」

タマ 「ちょ、ちょっと! どうなってるのよ!?」

陽乃 「葛西司令官! どうなさいますか!?」

光牙 「うぅ、いや……」

陽乃 「葛西司令官!」

光牙 「あ、あぁ。夢見、敵の分析を始めろ。有菜はどうした!?」



有菜 「何で… 何であそこに丈一が…」



(砲撃音)
(放心状態の有菜に、敵が攻撃する)

迎  「有菜姐、危ない! きゃあ!」

(砲撃音)
(有菜をかばった迎が攻撃を受ける)



タマ 「迎が攻撃されたわ! 司令官、指示を!」

光牙 「あ、あぁ…」

タマ 「司令官! 早く指示を! きゃあ!」

陽乃 「こ、このままでは持ち堪えられませんわ… きゃあ!」

(砲撃音)
(続いて、タマ、陽乃も攻撃されてしまう)



光牙 「タマ!陽乃! …くそ!このままじゃあ、さっき見た夢の通りになっちまう…。どうすりゃいいんだ!?」

夢見 「敵データ出ました! 敵は、幻影を見せるタイプのユミルです。 あの行徳さんの姿は幻影です。みなさん、惑わされないでください!」

明日風「有菜姐も葛西司令官もしっかりして! 今の夢見ちゃんの報告を聞いたでしょ! あれは幻影なんだよ!」



有菜 「明日風…」

明日風「行徳さんのニセモノなんて絶対に許せないじゃん!  本物の行徳さんは、冷静に状況を把握しろって言ってたんでしょう!?司令官!」

光牙 「明日風…お前…」



夢見 「敵データの続報です! 幻影の足元に敵の本体がありそうです。 その部分への攻撃が有効だと思われます…って、明日風ちゃん!聞いてるの!?」



(明日風は、夢見の続報を聞かずに、敵の頭部や上半身に攻撃を仕掛ける)

明日風「とりゃー! うおりゃー! あれ? なんで攻撃が当たらないの~?」

夢見 「明日風ちゃん! だから幻影の本体は足元だって言ってるのに~」



光牙 「てか、明日風が一番幻影に惑わされてるじゃねーか!? まったく…。そんなあいつに諭されるなんて、俺たちもまだまだだな、有菜」

有菜 「あぁ、そうだな。わたしらが、もっとしっかりしないとダメだよな!」


光牙 「そんじゃ、丈一の格好をしたニセモノ野郎をぶっ飛ばすぞ!」

光牙 「おい! 迎、タマ、陽乃! 動けるか!?」

迎  「なんとか…」

タマ 「えぇ」

陽乃 「はい」



光牙 「よし。まずはタマ、お前は、一人で暴走しまくってる明日風を最前線から一旦引かせろ。 陽乃は遠距離から敵の注意を引け。迎はその間に、敵の背後へ回れ!」

迎・タマ・陽乃「はいッ!」



(弓を引く音:ヒュンッ) 陽乃 「はぁーッ!」

(ドォォォォーーーーン)
陽乃 「さぁ、あなたのお相手はこちらですわよ!」



タマ 「ホント、あんたは世話が焼けるわね。ほら明日風、態勢を立て直すから一旦引くわよ!」

明日風「え? 今度はタマちゃんの姿をした敵!? どりゃー!」

タマ 「ちょっ、待って! あんたどんだけ幻影が好きなのよ! …ったく、しっかりしなさい。敵はあっちよ!」

明日風「あれ!? 本物のタマちゃんだ!」



迎  「こちら迎。敵の背後に回りました。夢見の分析通り、幻影の足元に本体らしき物体が見えます」

光牙 「よし。次は一気に畳み掛ける! 明日風、迎、夢見、タマ、足元へ突撃だ!」



夢見 「いくぞー!」

タマ 「食らいなさい!」

迎  「後ろがガラ空きよ!」

明日風「よくも騙してくれたわね!」



光牙 「みんないい感じだ! よし、最後は有菜! お前がこの戦いを終わらせろッ!」

有菜 「よっしゃー! いくぞ! これでもくらえーーッ!」



(爆発音)

明日風「有菜姐ナイス!」

迎  「やったわ」

夢見 「やったぁ! 倒したー!」

タマ 「ふ~、何とか片付いたわね」

陽乃 「有菜さん、さすがですわ。見事にぶっ放しましたわね」

光牙 「みんなよくやった。さぁ、全機帰投しろ」



(全機帰投する中、戦場を振り返る有菜に【幻想の行徳】が声をかける)

行徳 「有菜、よくやったな。俺は必ず戻るから、信じて待っててくれ…」

有菜 「気長に待ってるよ…丈一」



明日風「おーい!有菜姐、何してるの? 早く帰るよー」

有菜 「なんでもないよ、明日風。さて、みんなで勝利の焼き鳥でも食べに行くか! 光牙が奢ってくれるってよ~」

明日風・迎・夢見・タマ・陽乃 「やったー! 司令官ご馳走様で~す!」

光牙 「おい、何勝手に決めてんだよ! てか、ちびタマ! こういう時だけ敬語を使うんじゃねーよ!  …まぁ、いっか。今日は俺の奢りだ。目一杯食わしてやるぞ!」


【完】