●ストーリー#4
(2019.12.8 第5回イベント朗読劇)


『 ライバル現る!? 』




登場人物

小松川明日風―――cv:山本希望
船堀迎――――――cv:佳村はるか
タマーラ・アリア・瑞江・アンドロポポフ(タマ)――cv:谷口夢奈
篠崎夢見―――――cv:鈴木亜理沙
本八幡有菜――――cv:髙山ゆうこ
菊川陽乃―――――cv:榎吉麻弥

葛西光牙―――――cv:檜山修之
大和波音―――――cv:洲崎 綾

養成所おじさん―――cv:檜山修之
養成所おばさん―――cv:山本希望



◆ボートレーサー養成所にて。
大和波音(やまとなみね)が養成所を出発するシーン



波音「おじさん・おばさん、それじゃ行ってきます!」

養成所おじさん「ああ、行っといで」

養成所おばさん「気を付けてね、波音ちゃん。江戸川だっけ?  福岡から随分遠くて心配だよ」

波音「心配しすぎだよ、おばちゃん。数日間留守にするだけだってば。 それに、あのボートレース江戸川だよ! ヴァルキリーチームの先輩たちと一緒に訓練できるんだよ!」

養成所おじさん「訓練所に入ったばかりなのに、 TGSLから特別訓練の声がかかるとは、本当に大したもんだ!」

養成所おばさん「波音ちゃん、頑張ってるものね。 向こうでもしっかりね!」

波音「うん! 大暴れしてくるよ!」

(飛行機が飛ぶ音)




◆後日、[研究所内のブリーフィングルーム]にて。



光牙「みんな揃ったか? 本日は、養成所の訓練生を紹介する」

明日風「ようせいじょ? くんれんせい?」

光牙「その説明からかよ…」

迎「葛西司令官、明日風は特殊な入隊の仕方をしていますから…」

光牙「いいか、明日風。
全国各地には、ボートレース場が江戸川の他にも23場あって、 各レース場で『メイルストローム』の発生や『侵略生命体』の 出現に備え、訓練としてボートレースが行われている」

明日風「うん」

光牙「そのボートレースに出場するレーサーの養成所が福岡県にあるんだ。 そこの訓練生が本日から数日間、我々と一緒に訓練することに なったってわけだ」

明日風「なるほどー!」

光牙「待たせたな大和、入っていいぞ。まずは自己紹介をしろ」
ガチャ(ドアの開く音)



波音「(緊張した感じで)しゃ…しゃっす。じゃなくて、失礼します! ヴァ…ヴァルキリーチームのみなさん、は…初めまして。 じ…自分は、ボートレーサー養成所から来ました、訓練生の 大和波音やまとなみねです。未熟者ですが、よ…よろしくお願いします…!」




有菜「(ちゃかす感じで)お!? いいね~。 『しゃっす!』とか 『自分は…』とか、養成所時代を思い出すぜ~」

光牙「おいおい、有菜、ちゃかすんじゃねーよ。 改めて、俺は葛西光牙かさいこうが。このチームの司令官だ」

明日風「私は小松川明日風こまつがわあすか。よろしくね!」

迎「船堀 迎ふなぼり むかえです。よろしく」

タマ「タマーラ・アリア・瑞江みずえ・アンドロポポフよ。 分からないことがあれば、何でも聞いてちょうだい!」

夢見「し…篠崎夢見しのざきゆめみと申します…。機械とかが得意です…。 よ…よろしくお願いします」

有菜「しゃっす! 本八幡有菜もとやわたありなだ。波音、腹減ってねーか? 後で研究所内を案内したら、飯作ってやるからな!」

陽乃「有菜さんの作ってくださるお料理はとても美味しいですわよ~。 わたくしも是非ご一緒させて…。 あら、これは失礼いたしました。 わたくしは、菊川陽乃きくかわひなのと申します。よろしくお願いいたします」

光牙「以上が、ヴァルキリーチーム6名だ」



波音「(緊張して噛む)
あきょ…憧れの先輩方にお会いできて光栄です!
ゆ…夢みたいですっ

光牙「波音は養成所に入所したばかりにも関わらず、 成績が優秀だと業界内で話題になっていてな。 防衛省上層部の意向もあって、今回特別に我々の訓練に 参加する運びとなった」


▲玲子は既に何か感付いているが、表には出していない感じで
玲子「あらぁ、あなた。それ変わった形のペンダントね? 」



波音「え? ええっと、これは…。実はよく分からなくて…。 自分が保護された時に持っていた物らしいんですけど…」

タマ「ホゴされた?」

波音「え…えっと。その…」

▲やむを得ないというため息と共に

光牙「波音は、2年前に養成所の前で倒れているところを保護されてな。 名前と生年月日以外は何も覚えていないんだ。 記憶喪失ってやつだな」

▲本気で同情している感じで

明日風「そうなんだ…」

波音「なのでその…、このペンダントもどういう物なのか分からなくて…。 すみません」

光牙「謝ることはねーよ。こいつが唐突過ぎるのが悪い」



玲子「こいつとは失礼ね、光(こう)ちゃん。 私は素粒子物理学者にして、ここ、TGSLの所長、 中川なかがわ・ランドール・玲子れいこよ。 改めてそのペンダント、よく見せてもらってもいいかしら?」

波音「あ…はい。どうぞ…」



▲研究者としての血が騒ぐ玲子

玲子「無色透明の…ガラス…? いや、これは…まさか…。 少し調べてみたいから、これ借りておくわね。 それじゃ、未知のアンノウンが私を呼んでいるから、 これで失礼するわっ!」

光牙「・・・。あれは、新しいオモチャを見つけた時の顔だったな…」



有菜「…ったく、玲子様はスイッチ入ると、 挨拶もロクにできなくなっちまうんだもんなー。 まあ、気にすんな、波音。 研究所の中を案内してやるから、付いてきな」

波音「しゃっす! よろしくお願いします!」

光牙「頼んだぞ、有菜。それじゃ、他のメンバーは、これにて解散。 明日からは波音と一緒に模擬戦をやるから気合入れていけよ!」

全員(波音以外)「了解!」

◆有菜・波音を除く5人のメンバーが残り、会話するシーン



明日風「波音ちゃん可愛かったね~。 小柄でさ、小麦色の肌にきれいな銀髪で~」

タマ「そうね。 あれは美少女に目のない陽乃が 真っ先に抱き付きに行くレベルだから止めなきゃって 思ってたんだけど、あんた今日はやらなかったわね」

陽乃「(少し言いにくそうな感じで) そ…そうですわね…。気のせいかもしれませんけれど、 何だか近寄り難い気がして…」

タマ「何よ、歯切れ悪いわね」

陽乃「…迎さんはどう思われますか?」

迎「わ…私は…。別に…」

明日風「素直そうで、すっごくいい子だったじゃん。 ね、夢見ちゃんもそう思うよね?」

夢見「うん! 可愛い妹って感じで、面倒見てあげたくなっちゃったな」



タマ「甘いわね。油断してると、足下(あしもと)を掬(すく)われるかもよ? 特に、明日風!」

明日風「え? どゆこと??」

タマ「さっき、司令官も言ってたでしょ。『防衛省上層部の意向』で 波音が訓練に参加することになったって。 こんなこと、そうそうあることじゃないわ。 それだけあの子の能力が高いってこと」

明日風「へーっ すごいね!」

タマ「『すごいね!』じゃないわよ。 模擬戦の結果次第では、ヴァルキリーチームのメンバーを あの子と入れ替えるかもしれないって話よ。 そしたら危ないのは、経験の一番浅いあんたなんだからね!」

明日風「タマちゃん… もしかして私のことを心配して…!?」

夢見「タマちゃん優しい!」

タマ「はぁ!? そ…そんなわけないでしょ! 事実を言っただけよ! てか、『タマちゃん』って呼ぶな~っ!」

明日風「大丈夫だよ! 私、本番に強いタイプだから!」

夢見「そうだよ。明日風ちゃんは、すごいポテンシャルの持ち主だから 負けないよね!」



明日風「迎も、心配性のタマちゃんに何か言ってあげてよ。……迎?」

迎「え? あ…うん…。そうね…」

夢見「あ、もうこんな時間だよ、明日風ちゃん!」

明日風「やばっ…宿題あったんだった! 夢見ちゃん見せて」

タマ「いっつも夢見に頼ってばかりいないで、 たまには自分でやんなさいよ!」

明日風「ええ~~」

タマ「ほら、あんたたち、もう帰るわよ!」

タッタッタッ(走っていく音)

▲タマ・明日風・夢見は先に出て行く
(陽乃と迎だけが会話するシーン)



陽乃「迎さん、少しだけよろしいですか?」

迎「え? うん…」

陽乃「先程は皆さんがいらっしゃって、 はっきりとは言いづらかったのですが、 やっぱり、わたくしは、波音さんに違和感というか…、 胸騒ぎがしますの。 わたくしと同じ『ちゅ~にんぐ』の治癒能力をお持ちの迎さんなら、 何か感じられているかと思いまして…」

迎「…良い子…なんだとは思う。…でも…そうね、実は私も少しだけ…」

陽乃「わたくしたちの思い過ごしであれば良いのですけれど…」


◆翌日。訓練シーン



光牙「全員揃っているな。 それでは、これより波音を加えて訓練を開始したいと思う。 まず初めに通常のボートによる走行テストを実施する。 有菜、波音の相手をしてやってくれ」

有菜「了解っ! 容赦しねーぞ、こら!」

波音「しゃっす! 有菜先輩、よろしくお願いします! 養成所での訓練の成果を見せられるよう頑張ります!」

SE(モーター音)

◆ボートの音。まずは、有菜・波音が訓練を開始。
他のメンバーはそれを見ている

▲予想以上の波音のレベルの高さに、他のメンバーが驚く



タマ「やっば! 波音のスタートタイミング、 有菜姐(ねえ)より決まってるじゃん!」

夢見「ターンのスピードも負けてませんね。 とても訓練生のレベルとは思えないです!」

陽乃「この様子だと、メンバー入れ替えというお話も、 にわかに現実味を帯びて参りましたわね…」

光牙「なかなかやるな、あいつ。それじゃ、大丈夫そうだし、 早速 模擬戦形式の訓練に移るぞ!」

◆そこへ、玲子が猛烈な勢いで走ってくる
(どどどどどど・・・・・・)



玲子「ちょっと待ったぁ~!」

光牙「なんだよ、玲子。うっせーな」

玲子「昨日から波音さんのペンダントを調べていたのだけれど、 ヴァルキリーチームのみんなが持っている『モーターコア』と同様、 微量ではあるけれど、『V粒子』を発生させていることが 分かったの!」



夢見「本当ですか? だったら、波音ちゃんもいきなり 実戦仕様のヴァルキリーボートに乗れちゃうかも知れないって ことですか?」

明日風「何?何? それって、そんなにすごいことなの? 私だって最初から乗れてたじゃん!」

有菜「そりゃお前が特別で、普通はな、しこたま訓練してからじゃないと ヴァルキリーボートを起動すらできないもんなんだよ」



夢見「起動できたとしても、モーターコアとの相性が良くないと、 動力源のV粒子を十分に発生させられなくて、ボートの出力が 上がらない――、簡単に言えば、ロクに動かせないの」



玲子「そう!! つまり! もし波音さんのペンダントがモーターコアで、彼女がその適合者 なんだとしたら、ヴァルキリーボートの実機で訓練ができるって ことよ。しかも、このペンダント、特殊能力が何なのか 全く判断できない『無色透明』!! 果たして、どんな能力が秘められているのか!? オーっ、ホッホっ! これは本当に楽しみだわ~っ!」

陽乃「でも、いきなり実機での訓練は、 さすがに波音さんも戸惑うのでは…?」

SE(モーター音)

◆波音が走行テストから戻ってくる

波音「え!? もしかして、 本物のヴァルキリーボートに乗れるんですか!?」



明日風「波音ちゃんの走り見てたよ! 次はヴァルキリーボートで訓練だってさ~!」

波音「ありがとうございますっ!!」

光牙「ちょ、待てよ、お前ら…」

有菜「こいつ結構いい走りしてるぜ、光牙。 うちらも一緒にいるし、やらせてみようぜ!」

光牙「しかし…」

波音「自分は大丈夫です! むしろヴァルキリーボートに乗れるなんて光栄です! それに、このペンダントがモーターコアかも知れないなんて…。 これは、何もないわたしに神様がくれた贈り物だと思うんです! 是非やらせてください!」



玲子「波音ちゃんは本当にいい子ね~。さ、訓練を始めましょう! 見せてちょうだい、あなたのペンダントが持っている 特殊能力の全てをっ!!」

波音「しゃっす! 全力で頑張りますっ!!」

タマ「玲子様どころか、波音までスイッチ入っちゃった。 こりゃ、やるしかないわね~」

(有菜、少し嬉しそうに)
有菜「昨日の自己紹介の時とは大違いじゃねーかよ」

明日風「模擬戦、すっごく面白そう! ワクワクしてきたぁ~!」

光牙「仕方ねぇな~。だが、危なそうなら、すぐに止めるからな!」

◆波音がヴァルキリーボートを起動させるシーン
(※ここまでの希望的な展開とは異なり、少し不穏な雰囲気に変わる)



夢見「じゃあ、波音ちゃんのペンダントをヴァルキリーボートと リンクさせてみるね」

波音「はい…!」

夢見「リンク開始!」

◆モーターコアが輝き始める。だがあまり美しくはない…

夢見「すごい…! 初めてなのにシンクロ率が90%を超えてる… 他の特性も見たことない数値だよ!」




▲波音の様子がおかしくなり始める。すこし息が荒くなっている感じ
波音「はぁ…はぁ…」

夢見「波音ちゃん、大丈夫?」

波音「大丈夫…です。 少し緊張…しちゃって… 続けてください」

夢見「…分かった。ヴァルキリーボート、起動!」


◆ウィイイイイイン…という起動音とともに、
波音の目が大きく見開かれる






◆模擬戦形式の訓練開始



光牙「それでは、模擬戦形式の訓練を開始する。 まずは、明日風・迎・タマのチームと、有菜・陽乃・波音の 2チームに分かれて、仮想イバス撃退のタイムアタックを行う。 夢見は水面際でモニタリングして、 各チームの動きをチェックしてくれ」

全員「了解!」

◆訓練開始(ボート音)



明日風「波音ちゃんの走り、実際に水面上で見てもすごい! スピードも落ちないし、有菜姐(ねえ)、陽乃さんとの連携もいい感じ。 でも、1号艇のポジションは絶対に渡さないよ~っ!」

光牙「おっ! 明日風もやる気じゃねーか。 これはいい刺激になってるみたいだな。 よし! 次、2本目いくぞ!」

タマ「ほんと、あの子やるわね…。 明日風、迎! このままだと負けるわ! ギヤを上げていくわよ!」

明日風・迎「了解!」

▲波音を挑発する感じで
明日風「それじゃ、そろそろ本気出して行くよ~! 波音ちゃん、私に付いて来れるかな~? ま、初めてのヴァルキリーボートじゃ、難しいかもね~?」



▲明日風の問いかけが耳に入らないくらい集中している様子の波音
波音「もっと速く! もっとターンを鋭く! もっと速くっ! もっとターンを鋭くっ!」

有菜「おいおい波音、そんなに飛ばさなくても十分やれてるぞ。 ちょっと落ち着けよ」

迎「明日風、あなたもスピード出しすぎよ!」

明日風「平気、平気っ! 何だか今日は特に調子いいし! さ、波音ちゃん! もっと飛ばして行っくよ~!」



▲次第に波音の様子がおかしくなり、「R粒子」に精神が侵蝕されていく
波音「うぅ… 誰よりも速く! 誰よりもターンを鋭くっ!」

陽乃「波音さん、連携が乱れ始めていますわ。 わたくしたちの動きをよく見て――」

波音「ううぐぅ… わたしは負けない、誰にも負けないっ!」

有菜「波音っ! お前、一人で暴走してんじゃねえぞ!」

波音「あ…明日風先輩には負けたくない…。ううぐぅ… あ…あすか…には…」



▲明日風は自分のモーターコアが何か嫌な反応を示していることを 感じ取る

明日風「あれ? 何この感じ…? わたしのモーターコアがざわついてる??」

光牙「おい、どうした?」

夢見「司令官! 水面下で右回りのR粒子が発生し始めています。 何かおかしいです、これ」

光牙「なに? 水面下だと? 見た目には左回りの『L粒子』が安定しているが…。 いや、確かにヴァルキリーボートの出力表示が乱れ始めている。 水面下のR粒子と干渉しているのか…?」

◆アラートが鳴る!



光牙「おい、波音のボートのR粒子センサーの値がエラーになったぞ! どういうことだ!?」

▲科学者としての期待感が半分、一方で危機感が半分ぐらいの玲子
玲子「光牙、これヤバい展開になってきたかも…。 原因は分からないけど、波音のモーターコアの値が乱れてるわ。 それに合わせるようにR粒子が増大していて…。 この粒子濃度、まさにメイルストロームが発生する直前の状況と 同じよっ!」

光牙「なんだと!?
訓練中止! 訓練中止! 全員、直ちにピットへ戻れっ!」

有菜「おい波音! 今の通信が聞こえなかったのかよ! 訓練中止だ!」

波音「ヴヴヴぁ…」

陽乃「波音さん! 応答してください!」



波音「ヴグギャぁぁ…」


(戦闘音)
◆水面に大きな渦が広がり “メイルストローム”が出現する



迎「司令官! 上流の1マーク付近に巨大な渦が…。 メ…メイルストロームです!!」

光牙「波音、応答しろっ!!」

夢見「波音ちゃんが隊列から離れて、 メイルストロームに吸い寄せられています!」

タマ「ちょっと、あんた何やってんの! 早くハンドルを戻しなさいよ!」

明日風「どうしたの波音ちゃん!? メイルストロームから離れてっ!」


◆実戦開始

光牙「やむを得ん! このまま実戦へ移行する! ミッションは2つ! 波音の確保と、メイルストロームの消滅だ! 陣形を整えろっ!」

全員(波音以外)「了解!」

◆メイルストロームから巨大な“ユミル”と、多数の“イバス”が出現



夢見「し…司令官! 今度はメイルストロームの中心から、 ユミルとともに多数のイバスが出現しましたっ!」

光牙「いつも通りのフルコースってか…。 いいぜ、ついでに全滅させてやろうじゃねえか! いいか、お前ら! 後輩の前で格好悪いところを見せんじゃねえぞっ!」

有菜「よっしゃー! 一丁やってやろうじゃねーか!」

光牙「迎と陽乃は波音の確保に向かえ! 有菜、タマ、夢見は、明日風を後方から支援! 明日風は中央のユミルに接近、周囲のイバスは相手にするなっ!」

全員(波音以外)「了解!」



玲子「まさかとは思うけど、光牙、これって、波音がユミルやイバスを 呼び寄せているってことかも…」

光牙「ばか言え! 人間がやつらを呼ぶなんて聞いたことねーぞ!」

タマ「波音の様子が変になったのと、R粒子が発生し始めたのは 同じタイミングだったわ。あり得る話ね」

光牙「じゃあなんだ、波音がR粒子を放出しているとでも言うのかよ?」

玲子「波音じゃなく、彼女のモーターコアが、 R粒子を産み出しているとしたら…?」

光牙「なん…だと?」



玲子「これまで『モーターコアはV粒子を産み出す物』だと、私たちは 思い込んでいた。でも、そうじゃないのかも? これまで見つかったヴァルキリーチームの6個のモーターコアが V粒子を出していただけで、実は例外もあるとしたら? …いえ、そうじゃなくて、 もしかしたら6個の方が例外ってことも…」

光牙「待てよ! お前はさっき、波音のペンダントが 『わずかにV粒子を放出してる』って言ってたじゃねえか」



玲子「ええ。今の仮説に基づいて推論するなら、 波音のモーターコアがR粒子を放出し始めたのは、 ヴァルキリーボートとのリンク開始後…。 だから、波音自身がR粒子を放出させる『鍵』…といった ところかしらね」



夢見「わたしがその鍵を回しちゃった…」

有菜「いや、こっちも、けしかけたからな…」

陽乃「わたくしが、もっとしっかり止めていれば…」



タマ「ちょっと、あんたたち! そんなこと言ってる場合!?」

明日風「そうだよ! とにかく今は、波音ちゃんを助けるのが先だよ! 迎、陽乃さん、お願い! 私は絶対にユミルを倒すから!」

迎「そうね。 波音がメイルストロームに飲み込まれたら、この謎も闇の中…」

タマ「そもそも人がメイルストロームに飲み込まれるのを 見過ごすわけにはいかないわ!」

光牙「…ああ、その通りだ。うだうだ考えても仕方ねえ! とにかく波音を連れ戻せ! 話はそれからだ!」


◆波音の内面描写シーン(混沌の闇の中に漂っているイメージ)



波音「気持ち悪い…。頭がガンガン・グラグラする…」

波音(闇)「…抵抗するな …楽になれるぞ」

波音「だ…誰…?」



波音(闇)「…わたしは …お前だ」

波音「わたし? お前・・・? な…何を…言っているか…わからない…」

波音(闇)「…分からなくていい …どうせお前は …わたしに取り込まれるのだから」

波音「戻らなきゃ… みんなの所へ戻らなきゃ…」

波音(闇)「…戻れないさ …お前にできるのは …滅ぼすか …滅びるかのどちらかだ」



波音「…いや…いやだよ… 誰か…助けて…」

※波音の内面描写シーン終了


(戦闘音)
◆波音の確保に向かう



陽乃「迎さん、少々強引ではありますが、 両サイドから波音さんのボートを挟んで メイルストロームから引き離しましょう!」

迎「了解! 私が右側に付くわ! 陽乃は左側を!」

光牙「迎、陽乃! そのまま波音のボートとともにメイルストロームから回避! 右岸(うがん)の安全地帯まで戻って来い!」

迎・陽乃「了解!」


◆R粒子のせいで生命エネルギーを奪われ、ぐったりしている波音



陽乃「司令官! 今、迎さんが波音さんのボートに乗り込んで 意識を確認しています」

◆波音のモーターコアの色が濁っている
迎「波音、しっかりしなさい! …!! 何よ、このモーターコアの色は!? ちょっと、しっかりしてっ!」

波音(闇)「ヴグ…わるな」

迎「え? 何?」



波音(闇)「…わ…わたしに触るな…」

迎「あなた、何を言って…」

波音(闇)「…わたしに触るなと言っている… お前も取り込んでやろうか… クックックッ…」

◆波音の『闇』に、迎も巻き込まれそうになる



迎「…!? 私のモーターコアまで濁り始めて…!! ぐ… う…っ」

玲子「迎のモーターコアの数値まで乱れている… まさか汚染されている!? 2人ともR粒子の濃度が高すぎる… まずいわ! 精神とリンクしたままこんなに乱れたら…!!」

光牙「陽乃! 迎をサポートできるか!?」

陽乃「やってみます! 迎さん、諦めてはいけませんわ! 意識をしっかり保って、自分とモーターコアの力を信じて! わたくしたち2人ならきっとやれますわっ!」

迎「で…でも、ど…どうやって…」

陽乃「『ちゅ~にんぐ』ですわ! 波音さんの心とモーターコアの双方を正常に戻せる 唯一の可能性です!」

迎「…でも…ここで?」

明日風「迎、急いで! こっちも、もう持たない!」

陽乃「迷っている時間はありませんのよ! 波音さんを助けるためです」

迎「分かってるけど…」



波音「セン…パイ…ごめん…なさい… こんな…つもりじゃ… わたし…もう…戻れない…」

▲決意を固め、陽乃に声をかける
迎「…!! この程度で絶望するなんて許さない! いくわよ! 陽乃っ!」



◆ちゅ~~~ぅぅぅ

(迎と陽乃が、波音の左右から同時に『ちゅ~にんぐ』を行う)



玲子「おひぉ~! この絶体絶命の場面での熱~いダブル『ちゅ~にんぐ』よ! もっと、もっとやって! 激しいのをもっとブチュ~とやって、 濁りを浄化させちゃいなさい!」

タマ「ちょっと~! 戦況もやばいけど、玲子様もかなりやばいんじゃない?」

有菜「あの人、マジやばいよな…。ま、こっちもこっちで、 周りを敵に囲まちゃってるけどよ…」

玲子「ほらほら! 迎も陽乃もぉ~、まだまだ足りないわよ! もっと興奮するのを私に見せてちょうだいっ!」

陽乃「迎さん、恥ずかしがらずに!」

迎「う…うん…」

夢見「2人の『ちゅ~にんぐ』パワーすごいです! R粒子が急激に減少しています! 波音ちゃんと迎さんのモーターコアも 輝きを取り戻しつつあります!」



陽乃「(恍惚とした感じで) うふぅ~~。 司令官、波音さんはもう心配ありませんわ…」

光牙「(少し引いた感じで) お…おぅ…。 迎、お前も平気だな?」

迎「え…ええ、何とか…。…波音の確保、完了です」

◆波音を確保し、反撃に転じる!



タマ「ユミルの動きが鈍った! 今なら行けるわ!」

夢見「R粒子の減少に伴い、イバスの活動も弱くなっています!」

明日風「波音ちゃんは疑われちゃうし、せっかくの訓練も 邪魔されちゃうし、もう完っ全に怒った!!!」

光牙「よし 畳み込むぞ! 有菜、タマ、夢見は、周囲のイバスを殲滅(せんめつ)せよ!」

有菜・タマ・夢見「了解!」

夢見「戦況データ、アップデートしました! 敵の勢力が弱まったとは言え、 複数のイバスが新たに接近中です!」

◆有菜・タマが、それぞれがイバスを倒していく



有菜「ザコども、くたばりやがれーーーっ!」

(ドォォォォーーーーン)



タマ「もう、本当にしつこいんだからーっ! こうなったら、タマーラ家に代々伝わる戦闘能力を 見せてあげるわーーーっ!」

(ドォォォォーーーーン)



光牙「よし、明日風! 中央のユミルにとどめを刺せーっ!」

明日風「了解! うぉりゃぁぁぁーーーーーーーーっ!!!!」

(ドォォォォーーーーン)



◆爆音とともに戦闘終了。ユミル、メイルストロームも消滅
◆迎が波音を抱きしめているシーン。光に包まれている…



波音「…あれ…。わたしは…」

陽乃「気が付かれましたか?」

波音「何か…怖い すごく…怖い夢を…」

迎「きっとR粒子のせいで記憶が混濁(こんだく)しているのね。 生命エネルギーを吸収された上に、発生源のモーターコアと リンクまでしていたんだから、無理もないわ」



波音「わ…わたしは…!!(涙があふれ出す) 先輩達と一緒に訓練できるのが嬉しかっただけで…! いいところを見せたかっただけで…! こんなわたしでも何かをできるんだって… それだけなのに…」

迎「分かっているわ …何とか無事でよかった」

波音「あ…ありがとうございます。迎先輩、すごく暖かくて、いい匂い…」

▲穏やかな感じで
迎「こんな時に何言ってるの。さ、ピットに戻るわよ」

◆後日、[ピット付近]にて



▲喜々とした感じで
有菜「おい、知ってるか? 先日の一件以来、波音のやつ、迎にベッタリらしいぜ~」

タマ「知ってる、知ってる。 迎、完全に懐(なつ)かれちゃったみたいよね~。 あっ、噂をしてたら、本人たちが来たわよ」

◆波音が迎の後ろを追いかけながらメンバーのところへ合流する



迎「波音、もうわたしの後に付いて来るの止(や)めてよ! あなた早く福岡に帰りなさいよ!」

波音「嫌です! 自分はまだまだ迎先輩に教えてもらうことが、 たっくさ~んありますから、福岡へは帰りませ~んっ!」

迎「そんなわがままが通用するはずがないでしょ!」

▲やれやれ風に
有菜「残念だったな、迎。それが通用しちまったんだよな~」

迎「え? どういうこと…?」

有菜「光牙、説明してやってくれよ」

光牙「いや、実はな。防衛省のお偉いさん方から、 今回の件をしっかり調査しろってお達しがあってよ。 ま、そんなの言われなくても、うちの玲子様が勝手に 研究するんだろうけどよ。 そんなわけで、波音は当分の間、こっちで預かることになった」

迎「え!? 本気ですか? 私は断固反対です!」

明日風「いいじゃん、迎! 波音ちゃんも一緒の方が楽しいよ! ね、夢見ちゃんもそう思うよね?」

夢見「うん! それにね、近くにいれば、次に何かあっても すぐに対処できると思うの」

迎「ちょっと、明日風、夢見まで…」

陽乃「迎さん、もう観念された方がいいですわ。 上層部の命令は絶対ですわよ」

タマ「いいじゃない。 あんたたち『ちゅ~にんぐ』もした仲なんだから」

迎「あ…あれは緊急事態だったから、仕方なくしただけで…」

▲迎の腕にしがみつきながら
波音「明日風先輩、覚悟してください! 1号艇の座も、迎先輩のことも、 ぜ~んぶ、自分が奪っちゃいますからね! しゃ~っすぅ! あ、あと、アジフライよりも、イカフライの方が断然美味しいです!」

明日風「お!? 波音ちゃん言うね~。でも、1号艇は絶対に譲らないし、 揚げ物バトルも負けないよぉ~! ま、迎のことは別にいいけど」

▲明日風の言葉にショックを受ける迎
迎「えっ…!?」



タマ「ところで、あそこでヨダレを垂らしてる玲子様、 誰かなんとかしなさいよ…」

玲子「おひぉ~! あの熱~いダブル『ちゅ~にんぐ』最高だったわぁ~!」

光牙「…ありゃ当分ダメだな。放っとけ。 さあ! 今日も訓練始めるぞ、お前ら!」

全員「了解!」


【完】