●ストーリー#3
(2018.9.22 第4回イベント朗読劇)
『 白の適合者 』
登場人物
小松川明日風―――cv:山本希望
船堀迎――――――cv:佳村はるか
タマーラ・アリア・瑞江・アンドロポポフ(タマ)――cv:谷口夢奈
篠崎夢見―――――cv:鈴木亜理沙
本八幡有菜――――cv:髙山ゆうこ
菊川陽乃―――――cv:榎吉麻弥
葛西光牙―――――cv:檜山修之
中川・ランドール・玲子―――cv:日笠陽子
客A――檜山修之
客B――榎吉麻弥
客C――谷口夢奈
客D――髙山ゆうこ
◆TGSL本部内。
夜中、一人事務作業をしている光牙の携帯に、電話がかかってくる
(プルルルル…)
光牙「はい、葛西です。…なんだ、親父か。どうしたんだこんな時間に。 ……あぁ。……あぁ。なに!? あいつが帰ってくるって!? ……わかった。それはこっちで準備しておく。 ……あぁ。伝えてくれて助かった。それじゃあ」
(…ガチャッ)
光牙「……ふぅ。明日からまた忙しくなるぞ…」
◆次の日。
訓練後の堤防スタンドで、陽乃を除く5人が雑談
明日風「あー、今日の訓練もきつかったなー。 いっつもおんなじことの繰り返しで、やんなっちゃうよね~」
迎「まぁまぁ、そう言わずに。 気持ちはわかるけど、毎日の積み重ねが大事だから」
明日風「んー。わかってはいるんだけどね~」
有菜「ほら、お前ら、そろそろ移動するぞ」
明日風「え?この後なにかあったっけ?」
タマ「あんたねー。 今日は訓練後にミーティングがあるって連絡来てたでしょ」
明日風「あ! そうだった! タマちゃん!」
タマ「タマちゃんって呼ぶな!」
迎「それで? 今日のミーティングって、どんな内容なのかしら?」
有菜「んー。それが、まだわからないんだよなー」
タマ「そういえば、今日の訓練に陽乃がいなかったわね」
迎「陽乃が来ないなんて、珍しいわ…」
◆と、そこにリムジンが停車。中から陽乃が降りてくる。
(車の停車音)
(ドアを開ける音~閉める音)
陽乃「みなさま、ごきげんよう。もうお揃いですわね。」
明日風「あ、陽乃さん。今日はどうしたの?」
陽乃「あら。みなさまにはミーティングの内容が まだ伝わっていなかったのですね」
タマ「それで陽乃。今日のミーティングって、なんの件なの?」
陽乃「本日、玲子様が帰国されたのですよ」
タマ「げっ! あの玲子様が…」
迎「そ、そう。帰ってきたのね…」
有菜「マジか…。腹が痛くなってきた…」
明日風「ん? 玲子様って、研究所の所長の?」
陽乃「そうですわ。海外出張を終えられたので、わたくしが空港へ お迎えに行って参りましたの」
明日風「それにしても、なんでみんな、そんなにテンション低いの?」
迎「そうか。明日風はあまり、玲子様のことを知らないのね」
タマ「たしか玲子様は、あんたが6人目のメンバーとして ヴァルキリーチームに入ってすぐ、海外出張に行ってそれっきり だったわね」
陽乃「決して、帰ってこられるのが嫌な訳ではないのですが…」
有菜「ま、今日のミーティングでは怒られるんだろうな~」
明日風を除く5人「はぁ~(ため息)」
▲光牙、6人を呼びに登場
光牙「お! 全員揃ってるじゃねーか。 もう伝わってるみてーだが、今日はあの女所長のご帰還だ。 機嫌を損ねないうちに、さっさとブリーフィングルームに集まれ!」
全員(夢見除く)「は~い」
◆ブリーフィングルームにて。
明日風「ねぇねぇ葛西司令官。所長って、一体どんな人なの? みんな怖がってるみたいだけど」
光牙「あ?… そうだな…一言でいうと、バケモンだな」
明日風「バケモン?」
迎「大学と大学院を飛び級で卒業した、素粒子物理学の権威」
有菜「そしてあっという間にこのTGSLの所長に就任」
夢見「私たちのモーターコアは、あの人のおかげで、 より力が発揮されるように改良されたの」
陽乃「語学も堪能で、海外からの講演依頼も多数」
タマ「あと、おっぱいがでかい」
明日風「へ~。そんなにすごい人なんだ」
光牙「あぁ。たしかにすげ~人なんだが、 天才は1本ネジが飛んでるっつ~か…。 いったん研究者としてのスイッチが入ると、暴走するクセがあってよ。 ま、ズバリ、変人だな」
▲光牙の背後に、玲子が立っている
玲子「だぁーれが、変人ですって? 光(こう)ちゃぁ~ん?」
光牙「ギクッ!! その声は…!」
迎・タマ・有菜「玲子様!」
玲子「まったく。いつから光ちゃんは口が悪くなったのかしら。 小さい頃は『玲子さん、玲子さん』って、私の後ろばかり付いてきていたのに…」
明日風「へ~。光(こう)ちゃんにも可愛い時期があったんだね~」
タマ「昔のままの光(こう)ちゃんだったらよかったのにね~」
有菜「(笑いを堪えながら)こ、光(こう)ちゃん……。くくっ。 いつ聞いても笑える」
光牙「いつの話をしてるんだ! ったく…」
玲子「それがいつしか、野獣のような目で私を見るようになって…」
迎「い、いやらしい…」
タマ「うわぁ…」
陽乃「最低ですわ」
光牙「冤罪だ! いつそんな目をした!?」
玲子「まぁ光牙、冗談はこれくらいにして、 早速ミーティングを始めるわよ」
光牙「もう勝手にしてくれ…」
玲子「さてッ! 最近のみんなの訓練データを見させてもらったんだけどぉ。」
(徐々にトーンを上げていく、怒り口調に)
玲子「全ッ然だめね。みんなのシンクロ率が低すぎる。 私が開発したソウルモーターのブースト機能が 全く活かされていないじゃない!」
明日風「うわ~。めちゃくちゃ怒ってるよ…」
玲子「(冷静に過去を振り返るように) あなた達が理想のシンクロ率を出したのは、たった1回しかないの。」
玲子「そう。あれは明日風が私達と初めて出会ったときだったわ・・・・・・」
---回想シーン---
▲白のモーターコアを前に、光牙と玲子が話している
光牙「この前の適正テストでも、見つからなかったのか?」
玲子「どうしてこうも、白の適合者だけが見つからないのかしら?」
光牙「これでかれこれ何人目だ?これだけ全国探していないんだ。 もしかして、もう見つからないんじゃないか?」
玲子「でも、不思議なんだけど、この白のモーターコアが 時々反応することがあるの」
光牙「ってことは、レース場の近くに適合者がいるってことか?」
玲子「まさか…ね…」
◆明日風が売店『楽』にてアルバイト中。
店にアジフライを買いに来た客と談笑している
明日風「おっちゃん!アジフライ3個毎度あり! 今日も楽(らく)のアジフライは最高に美味しいよ!」
客A「おっ、明日風ちゃん。いつもお母さんの店を手伝ってエライな」
明日風「えへへ~」
客A「そういえば、最近水面で訓練してる女の子達をよく見かけるけど、 あれはなんだい?」
明日風「あー、あれはね、『ヴァルキリーチーム』っていって、ユミルやイバスと戦うための特別チームなんだって」
客A「ふ~ん。あんな若い子たちで、敵を倒せるのかね…? ところで…明日風ちゃん。今日のレースは何号艇が来ると思う?」
明日風「そうだなー。次のレースは、3号艇かな!」
客A「3号艇? たしか…
西舘 健
にしだて けん
選手だったか? でもなー。この前フライングしたしなー」
明日風「今度は絶対大丈夫だって! 江戸川ケンちゃんを信じてみてよ!」
◆突如、水面側から悲鳴が聞こえる
客B「きゃー!」
客C「なんなの!? あれは!?」
客D「に、逃げろーー!」
◆水面に大きな渦が広がり、中心から巨大な“ユミル”と多数の“イバス”が出現する
客A「こりゃあいかん! 明日風ちゃん! 早く逃げるぞ!」
明日風「う、うん」
◆ヴァルキリーチーム5人のもとに、光牙から通信が届く
光牙「ヴァルキリーチーム聞こえるか!? 大型のユミルと、多数のイバスの出現が観測された。 直ちに迎撃に当たる! これが初めての実戦だが、お前ら、行けるか!?」
5人「はい!」
▲5人は戦闘に向かう
◆光牙、玲子はモニタールーム
玲子「ちょっと光牙! モーターコアは6つ揃って初めて威力を発揮するの! 白の適合者がまだ見つかっていないのに、 5人で戦いに行くのは危険だわ!」
光牙「そんなのはわかっている! しかし、メイルストロームを消滅させられるのは、 ヴァルキリーボートに乗れる、あいつらにしかできないんだ!」
玲子「でも…」
▲5人の戦闘シーン。5人は苦戦している
有菜「くっ…。だめた、全然出力が上がってこない… これじゃ全く攻撃できないぞ!」
タマ「え~い! ちょこまかと鬱陶(うっとう)しいのよ!」
夢見「み、みなさん! 落ち着いてください!」
陽乃「そうですわ。みなさま落ち着いて、マニュアルの125ページ通りに攻撃すれば、結構当たりますわよ」
迎「いや。今はそんな余裕はないかと…」
◆そこへ、ユミルの攻撃が迎に当たり、吹き飛んでしまう
(咆哮音)~(打撃音)
迎「きゃあ!」
タマ「迎!」
光牙「大丈夫か!?」
有菜「迎が敵の攻撃を受けた!光牙、このままだと、わたしらも持ちこたえられない!」
光牙「くそっ! 厳しい展開だな…」
玲子「やっぱり、ボートは6艇揃わないとダメなのよ!」
▲ボートに乗ったまま気を失った迎を明日風が見つける
明日風「あ!? あれは、ヴァルキリーチームの子!」
迎「くっ…」
明日風「このままじゃあの子が危ない!待ってて、今、助けに行くからッ」
▲明日風が危険を省みず、水面へ飛び込み、迎の元へ向かう
(水に飛び込む音:バッシャーーン)
光牙「なんだ! あの子は! 水面に飛び込んだぞ! 無茶なことしやがって!」
▲明日風が、迎を揺り起こす
明日風「ねぇ! 大丈夫!? しっかりして!」
迎「うっ…うん…。あれ? あなた…」
明日風「よかったー。気が付いた」
光牙「迎! 聞こえるか! 迎!」
迎「はい…司令官」
光牙「迎! 気が付いたようだな。敵が迫っている! 今すぐその子を乗せて避難させろ!」
迎「司令官!? どうして一般人の子が私のところに…!」
光牙「いいから、とにかくその場を離れるんだ!」
タマ「迎、早く逃げて! すぐ後ろに敵が…!」
迎「…っ! ダメッ、逃げ切れない…!」
▲明日風、叫ぶ
明日風「いやぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
◆すると、徐々に明日風の胸が白く光り出す
明日風「(ゆっくりとつぶやく感じで) この光は、なに? 胸が苦しくて、ドキドキする…。」
◆研究所内に保管されていた白のモーターコアも光り出す
玲子「これは!?」
光牙「なんだ!? なにが起こっている!?」
玲子「白のモーターコアの数値が異常なスピードで上昇しているわ!」
光牙「なんなんだ、この光は!?」
◆光が最高潮に達したとき、白のモーターコアは明日風の胸に転送される
玲子「モーターコアが…消えた…っ!?」
明日風「んっ…! これは…? 体が… 熱い…」
迎「…っ! なぜ、この子の胸に白のモーターコアが?」
明日風「え? 白い… モーターコア?」
光牙「モーターコアが…転送された…だと?」
◆明日風、迎の周囲の敵(イバス)が白い光で消えていく
夢見「あっ! 司令官! 迎ちゃん達に迫っていた敵が、白い光にはじき返されています! しかも、私たちのシンクロ率が急上昇しています!」
▲狂ったように喜ぶ玲子
玲子「このシンクロ率は…! フフ。フフフフフフ。あーっはっはっは!!やったわ!! やっと見つけた! 彼女が白の適合者よ!」
光牙「なんだと!? あの女の子がそうなのか…!」
▲急激に上がったシンクロ率に、他のメンバーが驚く
有菜「なんだ!? 出力が急に上がってきているぞ!?」
陽乃「まぁ、ほんとに」
タマ「ちょ、ちょ、ちょっと司令官! どうなってんの!?」
光牙「どうやら、迎のボートに乗っている女の子が白の適合者らしい…。 だが、今は考えてる余裕はない! これは反撃のチャンスだ! 迎、少々強引だが、その子を乗せたまま戦線に復帰できるか?!」
迎「で、でも、彼女は訓練もろくに…!」
光牙「わかっている。しかし、現にシンクロ率は確実に上昇している。 今はその子に賭けるしかない」
迎「…わかりました」
迎「ねぇあなた! 私にしっかり掴まっていて!」
(ボート発進~加速音)
▲迎がボートを操縦、後ろに明日風が乗っている
明日風「え? あ、ちょっ、ちょっと! う、うわぁーー! ボートなんて乗ったことないのに…うわあーー!」
迎「ちょっと! 暴れないでよ!」
明日風「だ、だって! ボートってこんなにスピード出るの?」
迎「みんな、このまま攻撃に行くわ」
タマ「その子が、白の適合者?」
有菜「タマ、そんな会話してるヒマなんて、なさそうだぜ!」
陽乃「まぁまぁ。後で“ちゅ~にんぐ”して差し上げますわ」
夢見「みなさん、敵を攻撃しつつ、フォーメーションを組み直しましょう。 私の分析では、シンクロターンが決まれば、 この渦を消滅できるはずです!」
▲それぞれがイバスを倒していく
夢見「えい!」
(ドォォォォーーーーン)
タマ「とりゃー!」
(ドォォォォーーーーン)
陽乃「ハァーーッ!」
(ドォォォォーーーーン)
有菜「うおりゃー!」
(ドォォォォーーーーン)
▲明日風が後ろで暴れるため、迎だけうまくボートを操縦できない
明日風「いけ、いけぇー!」
迎「ちょ、ちょっと! だから暴れないでって言ってるでしょ!」
明日風「おりゃ、おりゃー!
なんかちょっとボートのスピードにも慣れてきたよ!」
夢見「司令官!やはり、彼女の白い光で周りのイバスがどんどん消滅しています。 残るは、渦の中心にいるユミルだけです!」
有菜「おい、迎! ターンが乱れているぞ! 集中しろ! これじゃあみんなでシンクロターンが決められないぞ!」
迎「この状況で無理言わないでよ…」
タマ「正直、私の体力もそろそろ限界だわ!」
光牙「迎! 後ろの子と呼吸を合わせろ!」
迎「りょ、了解」
迎「あなた、最後くらいは私の動きに合わせてよ!」
明日風「よしきた!」
光牙「OK! それじゃ、全員で最高のシンクロターンを決めてこい!」
明日風・迎「いっけーーー!」
全員(夢見除く)「シンクロターーーーーーーーン!!」
◆全員でのシンクロターンが決まり、メイルストロームは消滅
光牙「やったか?!」
夢見「メイルストロームの消滅を確認! 敵反応、完全に消えました」
光牙「了解。ヴァルキリーチームは直ちにピットへ帰還せよ。 救護チームは周囲にケガ人が居ないか確認してくれ!」
◆全員ピットに戻ってくる
明日風「ねぇ、ねえ、もう敵はいなくなったの?」
迎「あなた! 水面に飛び込んでくるなんて、無茶よ! 一体何を考えているの!」
明日風「だって、ほっとけないよ!」
タマ「ちょっと、迎。 せっかく初めての戦闘から無事に戻ってこれたんだから、 ケンカなんてやめなさいよ!」
▲そこへ、玲子が猛烈な勢いで走ってくる
(どどどどどど・・・・・・)
玲子「み、み、見つけたわーー! 白の適合者!! 絶対に逃がさないわ!! 私の理論は間違っていなかった、最高のシンクロ率よーー!」
▲玲子が明日風に抱きつき、玲子の胸で明日風が窒息しかける
明日風「うわっ わっぷ!! い、息が…」
陽乃「玲子様! ずるいですわ! わたくしも!」
▲陽乃も抱きつきに参加し、明日風が虫の息に
明日風「んーー!! んーー!」
(靴の音)
▲光牙が少し遅れて合流
光牙「おいおい。そのへんにしといてやれ」
▲明日風が窒息から解放される
明日風「げほっ! げほっ! た、助かった~」
▲明日風、迎、司令官が初めて対面
光牙「俺はこのチームの司令官、葛西光牙。 君が最後の6人目、白の適合者だ。 つまり、君は今日からヴァルキリーチームの一員だ。」
迎「私は、船堀迎。ねぇ、あなた、名前は?」
明日風「私? 私の名前は、小松川明日風!」
---回想シーン終了---
◆現在。ブリーフィングルームにて
玲子「はぁ~。あの時のシンクロ率が忘れられないわ~。 あれをいつでも出せるようにしておけば、多くの人の命が救えるの。 だから、あなたたちはしっかり訓練に励む必要があるのよ。」
全員「はいっ!」
明日風「もっと訓練して、たくさんの人を助けられるように ならなくちゃ!」
迎「えぇ! そうね」
夢見「うん! がんばろう」
タマ「ま、日々の訓練は無駄じゃないってことよね」
有菜「よーし! じゃあこれから早速はじめるか!」
陽乃「善は急げ、ですわね」
光牙「あ、いや…、おれは…これからビ、ビ、ビールの時間なんだけど…」
玲子「光ちゃぁ~ん? 昔、一緒にお風呂に入ってた時の話をしちゃってもいいのかしらぁ?」
光牙「んーー!! 張り切って訓練しような! みんな! 今すぐ再開だー!!」
全員「おー!!」
【完】
『 白の適合者 』
登場人物
小松川明日風―――cv:山本希望
船堀迎――――――cv:佳村はるか
タマーラ・アリア・瑞江・アンドロポポフ(タマ)――cv:谷口夢奈
篠崎夢見―――――cv:鈴木亜理沙
本八幡有菜――――cv:髙山ゆうこ
菊川陽乃―――――cv:榎吉麻弥
葛西光牙―――――cv:檜山修之
中川・ランドール・玲子―――cv:日笠陽子
客A――檜山修之
客B――榎吉麻弥
客C――谷口夢奈
客D――髙山ゆうこ
◆TGSL本部内。
夜中、一人事務作業をしている光牙の携帯に、電話がかかってくる
(プルルルル…)
光牙「はい、葛西です。…なんだ、親父か。どうしたんだこんな時間に。 ……あぁ。……あぁ。なに!? あいつが帰ってくるって!? ……わかった。それはこっちで準備しておく。 ……あぁ。伝えてくれて助かった。それじゃあ」
(…ガチャッ)
光牙「……ふぅ。明日からまた忙しくなるぞ…」
◆次の日。
訓練後の堤防スタンドで、陽乃を除く5人が雑談
明日風「あー、今日の訓練もきつかったなー。 いっつもおんなじことの繰り返しで、やんなっちゃうよね~」
迎「まぁまぁ、そう言わずに。 気持ちはわかるけど、毎日の積み重ねが大事だから」
明日風「んー。わかってはいるんだけどね~」
有菜「ほら、お前ら、そろそろ移動するぞ」
明日風「え?この後なにかあったっけ?」
タマ「あんたねー。 今日は訓練後にミーティングがあるって連絡来てたでしょ」
明日風「あ! そうだった! タマちゃん!」
タマ「タマちゃんって呼ぶな!」
迎「それで? 今日のミーティングって、どんな内容なのかしら?」
有菜「んー。それが、まだわからないんだよなー」
タマ「そういえば、今日の訓練に陽乃がいなかったわね」
迎「陽乃が来ないなんて、珍しいわ…」
◆と、そこにリムジンが停車。中から陽乃が降りてくる。
(車の停車音)
(ドアを開ける音~閉める音)
陽乃「みなさま、ごきげんよう。もうお揃いですわね。」
明日風「あ、陽乃さん。今日はどうしたの?」
陽乃「あら。みなさまにはミーティングの内容が まだ伝わっていなかったのですね」
タマ「それで陽乃。今日のミーティングって、なんの件なの?」
陽乃「本日、玲子様が帰国されたのですよ」
タマ「げっ! あの玲子様が…」
迎「そ、そう。帰ってきたのね…」
有菜「マジか…。腹が痛くなってきた…」
明日風「ん? 玲子様って、研究所の所長の?」
陽乃「そうですわ。海外出張を終えられたので、わたくしが空港へ お迎えに行って参りましたの」
明日風「それにしても、なんでみんな、そんなにテンション低いの?」
迎「そうか。明日風はあまり、玲子様のことを知らないのね」
タマ「たしか玲子様は、あんたが6人目のメンバーとして ヴァルキリーチームに入ってすぐ、海外出張に行ってそれっきり だったわね」
陽乃「決して、帰ってこられるのが嫌な訳ではないのですが…」
有菜「ま、今日のミーティングでは怒られるんだろうな~」
明日風を除く5人「はぁ~(ため息)」
▲光牙、6人を呼びに登場
光牙「お! 全員揃ってるじゃねーか。 もう伝わってるみてーだが、今日はあの女所長のご帰還だ。 機嫌を損ねないうちに、さっさとブリーフィングルームに集まれ!」
全員(夢見除く)「は~い」
◆ブリーフィングルームにて。
明日風「ねぇねぇ葛西司令官。所長って、一体どんな人なの? みんな怖がってるみたいだけど」
光牙「あ?… そうだな…一言でいうと、バケモンだな」
明日風「バケモン?」
迎「大学と大学院を飛び級で卒業した、素粒子物理学の権威」
有菜「そしてあっという間にこのTGSLの所長に就任」
夢見「私たちのモーターコアは、あの人のおかげで、 より力が発揮されるように改良されたの」
陽乃「語学も堪能で、海外からの講演依頼も多数」
タマ「あと、おっぱいがでかい」
明日風「へ~。そんなにすごい人なんだ」
光牙「あぁ。たしかにすげ~人なんだが、 天才は1本ネジが飛んでるっつ~か…。 いったん研究者としてのスイッチが入ると、暴走するクセがあってよ。 ま、ズバリ、変人だな」
▲光牙の背後に、玲子が立っている
玲子「だぁーれが、変人ですって? 光(こう)ちゃぁ~ん?」
光牙「ギクッ!! その声は…!」
迎・タマ・有菜「玲子様!」
玲子「まったく。いつから光ちゃんは口が悪くなったのかしら。 小さい頃は『玲子さん、玲子さん』って、私の後ろばかり付いてきていたのに…」
明日風「へ~。光(こう)ちゃんにも可愛い時期があったんだね~」
タマ「昔のままの光(こう)ちゃんだったらよかったのにね~」
有菜「(笑いを堪えながら)こ、光(こう)ちゃん……。くくっ。 いつ聞いても笑える」
光牙「いつの話をしてるんだ! ったく…」
玲子「それがいつしか、野獣のような目で私を見るようになって…」
迎「い、いやらしい…」
タマ「うわぁ…」
陽乃「最低ですわ」
光牙「冤罪だ! いつそんな目をした!?」
玲子「まぁ光牙、冗談はこれくらいにして、 早速ミーティングを始めるわよ」
光牙「もう勝手にしてくれ…」
玲子「さてッ! 最近のみんなの訓練データを見させてもらったんだけどぉ。」
(徐々にトーンを上げていく、怒り口調に)
玲子「全ッ然だめね。みんなのシンクロ率が低すぎる。 私が開発したソウルモーターのブースト機能が 全く活かされていないじゃない!」
明日風「うわ~。めちゃくちゃ怒ってるよ…」
玲子「(冷静に過去を振り返るように) あなた達が理想のシンクロ率を出したのは、たった1回しかないの。」
玲子「そう。あれは明日風が私達と初めて出会ったときだったわ・・・・・・」
---回想シーン---
▲白のモーターコアを前に、光牙と玲子が話している
光牙「この前の適正テストでも、見つからなかったのか?」
玲子「どうしてこうも、白の適合者だけが見つからないのかしら?」
光牙「これでかれこれ何人目だ?これだけ全国探していないんだ。 もしかして、もう見つからないんじゃないか?」
玲子「でも、不思議なんだけど、この白のモーターコアが 時々反応することがあるの」
光牙「ってことは、レース場の近くに適合者がいるってことか?」
玲子「まさか…ね…」
◆明日風が売店『楽』にてアルバイト中。
店にアジフライを買いに来た客と談笑している
明日風「おっちゃん!アジフライ3個毎度あり! 今日も楽(らく)のアジフライは最高に美味しいよ!」
客A「おっ、明日風ちゃん。いつもお母さんの店を手伝ってエライな」
明日風「えへへ~」
客A「そういえば、最近水面で訓練してる女の子達をよく見かけるけど、 あれはなんだい?」
明日風「あー、あれはね、『ヴァルキリーチーム』っていって、ユミルやイバスと戦うための特別チームなんだって」
客A「ふ~ん。あんな若い子たちで、敵を倒せるのかね…? ところで…明日風ちゃん。今日のレースは何号艇が来ると思う?」
明日風「そうだなー。次のレースは、3号艇かな!」
客A「3号艇? たしか…
明日風「今度は絶対大丈夫だって! 江戸川ケンちゃんを信じてみてよ!」
◆突如、水面側から悲鳴が聞こえる
客B「きゃー!」
客C「なんなの!? あれは!?」
客D「に、逃げろーー!」
◆水面に大きな渦が広がり、中心から巨大な“ユミル”と多数の“イバス”が出現する
客A「こりゃあいかん! 明日風ちゃん! 早く逃げるぞ!」
明日風「う、うん」
◆ヴァルキリーチーム5人のもとに、光牙から通信が届く
光牙「ヴァルキリーチーム聞こえるか!? 大型のユミルと、多数のイバスの出現が観測された。 直ちに迎撃に当たる! これが初めての実戦だが、お前ら、行けるか!?」
5人「はい!」
▲5人は戦闘に向かう
◆光牙、玲子はモニタールーム
玲子「ちょっと光牙! モーターコアは6つ揃って初めて威力を発揮するの! 白の適合者がまだ見つかっていないのに、 5人で戦いに行くのは危険だわ!」
光牙「そんなのはわかっている! しかし、メイルストロームを消滅させられるのは、 ヴァルキリーボートに乗れる、あいつらにしかできないんだ!」
玲子「でも…」
▲5人の戦闘シーン。5人は苦戦している
有菜「くっ…。だめた、全然出力が上がってこない… これじゃ全く攻撃できないぞ!」
タマ「え~い! ちょこまかと鬱陶(うっとう)しいのよ!」
夢見「み、みなさん! 落ち着いてください!」
陽乃「そうですわ。みなさま落ち着いて、マニュアルの125ページ通りに攻撃すれば、結構当たりますわよ」
迎「いや。今はそんな余裕はないかと…」
◆そこへ、ユミルの攻撃が迎に当たり、吹き飛んでしまう
(咆哮音)~(打撃音)
迎「きゃあ!」
タマ「迎!」
光牙「大丈夫か!?」
有菜「迎が敵の攻撃を受けた!光牙、このままだと、わたしらも持ちこたえられない!」
光牙「くそっ! 厳しい展開だな…」
玲子「やっぱり、ボートは6艇揃わないとダメなのよ!」
▲ボートに乗ったまま気を失った迎を明日風が見つける
明日風「あ!? あれは、ヴァルキリーチームの子!」
迎「くっ…」
明日風「このままじゃあの子が危ない!待ってて、今、助けに行くからッ」
▲明日風が危険を省みず、水面へ飛び込み、迎の元へ向かう
(水に飛び込む音:バッシャーーン)
光牙「なんだ! あの子は! 水面に飛び込んだぞ! 無茶なことしやがって!」
▲明日風が、迎を揺り起こす
明日風「ねぇ! 大丈夫!? しっかりして!」
迎「うっ…うん…。あれ? あなた…」
明日風「よかったー。気が付いた」
光牙「迎! 聞こえるか! 迎!」
迎「はい…司令官」
光牙「迎! 気が付いたようだな。敵が迫っている! 今すぐその子を乗せて避難させろ!」
迎「司令官!? どうして一般人の子が私のところに…!」
光牙「いいから、とにかくその場を離れるんだ!」
タマ「迎、早く逃げて! すぐ後ろに敵が…!」
迎「…っ! ダメッ、逃げ切れない…!」
▲明日風、叫ぶ
明日風「いやぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
◆すると、徐々に明日風の胸が白く光り出す
明日風「(ゆっくりとつぶやく感じで) この光は、なに? 胸が苦しくて、ドキドキする…。」
◆研究所内に保管されていた白のモーターコアも光り出す
玲子「これは!?」
光牙「なんだ!? なにが起こっている!?」
玲子「白のモーターコアの数値が異常なスピードで上昇しているわ!」
光牙「なんなんだ、この光は!?」
◆光が最高潮に達したとき、白のモーターコアは明日風の胸に転送される
玲子「モーターコアが…消えた…っ!?」
明日風「んっ…! これは…? 体が… 熱い…」
迎「…っ! なぜ、この子の胸に白のモーターコアが?」
明日風「え? 白い… モーターコア?」
光牙「モーターコアが…転送された…だと?」
◆明日風、迎の周囲の敵(イバス)が白い光で消えていく
夢見「あっ! 司令官! 迎ちゃん達に迫っていた敵が、白い光にはじき返されています! しかも、私たちのシンクロ率が急上昇しています!」
▲狂ったように喜ぶ玲子
玲子「このシンクロ率は…! フフ。フフフフフフ。あーっはっはっは!!やったわ!! やっと見つけた! 彼女が白の適合者よ!」
光牙「なんだと!? あの女の子がそうなのか…!」
▲急激に上がったシンクロ率に、他のメンバーが驚く
有菜「なんだ!? 出力が急に上がってきているぞ!?」
陽乃「まぁ、ほんとに」
タマ「ちょ、ちょ、ちょっと司令官! どうなってんの!?」
光牙「どうやら、迎のボートに乗っている女の子が白の適合者らしい…。 だが、今は考えてる余裕はない! これは反撃のチャンスだ! 迎、少々強引だが、その子を乗せたまま戦線に復帰できるか?!」
迎「で、でも、彼女は訓練もろくに…!」
光牙「わかっている。しかし、現にシンクロ率は確実に上昇している。 今はその子に賭けるしかない」
迎「…わかりました」
迎「ねぇあなた! 私にしっかり掴まっていて!」
(ボート発進~加速音)
▲迎がボートを操縦、後ろに明日風が乗っている
明日風「え? あ、ちょっ、ちょっと! う、うわぁーー! ボートなんて乗ったことないのに…うわあーー!」
迎「ちょっと! 暴れないでよ!」
明日風「だ、だって! ボートってこんなにスピード出るの?」
迎「みんな、このまま攻撃に行くわ」
タマ「その子が、白の適合者?」
有菜「タマ、そんな会話してるヒマなんて、なさそうだぜ!」
陽乃「まぁまぁ。後で“ちゅ~にんぐ”して差し上げますわ」
夢見「みなさん、敵を攻撃しつつ、フォーメーションを組み直しましょう。 私の分析では、シンクロターンが決まれば、 この渦を消滅できるはずです!」
▲それぞれがイバスを倒していく
夢見「えい!」
(ドォォォォーーーーン)
タマ「とりゃー!」
(ドォォォォーーーーン)
陽乃「ハァーーッ!」
(ドォォォォーーーーン)
有菜「うおりゃー!」
(ドォォォォーーーーン)
▲明日風が後ろで暴れるため、迎だけうまくボートを操縦できない
明日風「いけ、いけぇー!」
迎「ちょ、ちょっと! だから暴れないでって言ってるでしょ!」
明日風「おりゃ、おりゃー!
なんかちょっとボートのスピードにも慣れてきたよ!」
夢見「司令官!やはり、彼女の白い光で周りのイバスがどんどん消滅しています。 残るは、渦の中心にいるユミルだけです!」
有菜「おい、迎! ターンが乱れているぞ! 集中しろ! これじゃあみんなでシンクロターンが決められないぞ!」
迎「この状況で無理言わないでよ…」
タマ「正直、私の体力もそろそろ限界だわ!」
光牙「迎! 後ろの子と呼吸を合わせろ!」
迎「りょ、了解」
迎「あなた、最後くらいは私の動きに合わせてよ!」
明日風「よしきた!」
光牙「OK! それじゃ、全員で最高のシンクロターンを決めてこい!」
明日風・迎「いっけーーー!」
全員(夢見除く)「シンクロターーーーーーーーン!!」
◆全員でのシンクロターンが決まり、メイルストロームは消滅
光牙「やったか?!」
夢見「メイルストロームの消滅を確認! 敵反応、完全に消えました」
光牙「了解。ヴァルキリーチームは直ちにピットへ帰還せよ。 救護チームは周囲にケガ人が居ないか確認してくれ!」
◆全員ピットに戻ってくる
明日風「ねぇ、ねえ、もう敵はいなくなったの?」
迎「あなた! 水面に飛び込んでくるなんて、無茶よ! 一体何を考えているの!」
明日風「だって、ほっとけないよ!」
タマ「ちょっと、迎。 せっかく初めての戦闘から無事に戻ってこれたんだから、 ケンカなんてやめなさいよ!」
▲そこへ、玲子が猛烈な勢いで走ってくる
(どどどどどど・・・・・・)
玲子「み、み、見つけたわーー! 白の適合者!! 絶対に逃がさないわ!! 私の理論は間違っていなかった、最高のシンクロ率よーー!」
▲玲子が明日風に抱きつき、玲子の胸で明日風が窒息しかける
明日風「うわっ わっぷ!! い、息が…」
陽乃「玲子様! ずるいですわ! わたくしも!」
▲陽乃も抱きつきに参加し、明日風が虫の息に
明日風「んーー!! んーー!」
(靴の音)
▲光牙が少し遅れて合流
光牙「おいおい。そのへんにしといてやれ」
▲明日風が窒息から解放される
明日風「げほっ! げほっ! た、助かった~」
▲明日風、迎、司令官が初めて対面
光牙「俺はこのチームの司令官、葛西光牙。 君が最後の6人目、白の適合者だ。 つまり、君は今日からヴァルキリーチームの一員だ。」
迎「私は、船堀迎。ねぇ、あなた、名前は?」
明日風「私? 私の名前は、小松川明日風!」
---回想シーン終了---
◆現在。ブリーフィングルームにて
玲子「はぁ~。あの時のシンクロ率が忘れられないわ~。 あれをいつでも出せるようにしておけば、多くの人の命が救えるの。 だから、あなたたちはしっかり訓練に励む必要があるのよ。」
全員「はいっ!」
明日風「もっと訓練して、たくさんの人を助けられるように ならなくちゃ!」
迎「えぇ! そうね」
夢見「うん! がんばろう」
タマ「ま、日々の訓練は無駄じゃないってことよね」
有菜「よーし! じゃあこれから早速はじめるか!」
陽乃「善は急げ、ですわね」
光牙「あ、いや…、おれは…これからビ、ビ、ビールの時間なんだけど…」
玲子「光ちゃぁ~ん? 昔、一緒にお風呂に入ってた時の話をしちゃってもいいのかしらぁ?」
光牙「んーー!! 張り切って訓練しような! みんな! 今すぐ再開だー!!」
全員「おー!!」
【完】