●ストーリー#3
(2018.9.22 第4回イベント朗読劇)


『 白の適合者 』



登場人物

小松川明日風―――cv:山本希望
船堀迎――――――cv:佳村はるか
タマーラ・アリア・瑞江・アンドロポポフ(タマ)――cv:谷口夢奈
篠崎夢見―――――cv:鈴木亜理沙
本八幡有菜――――cv:髙山ゆうこ
菊川陽乃―――――cv:榎吉麻弥

葛西光牙―――――cv:檜山修之
中川・ランドール・玲子―――cv:日笠陽子

客A――檜山修之
客B――榎吉麻弥
客C――谷口夢奈
客D――髙山ゆうこ



◆TGSL本部内。
 夜中、一人事務作業をしている光牙の携帯に、電話がかかってくる

(プルルルル…)



光牙「はい、葛西です。…なんだ、親父か。どうしたんだこんな時間に。 ……あぁ。……あぁ。なに!? あいつが帰ってくるって!? ……わかった。それはこっちで準備しておく。 ……あぁ。伝えてくれて助かった。それじゃあ」

(…ガチャッ)

光牙「……ふぅ。明日からまた忙しくなるぞ…」

◆次の日。
訓練後の堤防スタンドで、陽乃を除く5人が雑談



明日風「あー、今日の訓練もきつかったなー。 いっつもおんなじことの繰り返しで、やんなっちゃうよね~」

迎「まぁまぁ、そう言わずに。 気持ちはわかるけど、毎日の積み重ねが大事だから」

明日風「んー。わかってはいるんだけどね~」

有菜「ほら、お前ら、そろそろ移動するぞ」

明日風「え?この後なにかあったっけ?」

タマ「あんたねー。 今日は訓練後にミーティングがあるって連絡来てたでしょ」

明日風「あ! そうだった! タマちゃん!」

タマ「タマちゃんって呼ぶな!」

迎「それで? 今日のミーティングって、どんな内容なのかしら?」

有菜「んー。それが、まだわからないんだよなー」

タマ「そういえば、今日の訓練に陽乃がいなかったわね」

迎「陽乃が来ないなんて、珍しいわ…」


◆と、そこにリムジンが停車。中から陽乃が降りてくる。
(車の停車音)
(ドアを開ける音~閉める音)


陽乃「みなさま、ごきげんよう。もうお揃いですわね。」



明日風「あ、陽乃さん。今日はどうしたの?」

陽乃「あら。みなさまにはミーティングの内容が まだ伝わっていなかったのですね」

タマ「それで陽乃。今日のミーティングって、なんの件なの?」



陽乃「本日、玲子様が帰国されたのですよ」

タマ「げっ! あの玲子様が…」

迎「そ、そう。帰ってきたのね…」

有菜「マジか…。腹が痛くなってきた…」

明日風「ん? 玲子様って、研究所の所長の?」

陽乃「そうですわ。海外出張を終えられたので、わたくしが空港へ お迎えに行って参りましたの」



明日風「それにしても、なんでみんな、そんなにテンション低いの?」

迎「そうか。明日風はあまり、玲子様のことを知らないのね」

タマ「たしか玲子様は、あんたが6人目のメンバーとして ヴァルキリーチームに入ってすぐ、海外出張に行ってそれっきり だったわね」

陽乃「決して、帰ってこられるのが嫌な訳ではないのですが…」

有菜「ま、今日のミーティングでは怒られるんだろうな~」

明日風を除く5人「はぁ~(ため息)」

▲光牙、6人を呼びに登場

光牙「お! 全員揃ってるじゃねーか。 もう伝わってるみてーだが、今日はあの女所長のご帰還だ。 機嫌を損ねないうちに、さっさとブリーフィングルームに集まれ!」

全員(夢見除く)「は~い」




◆ブリーフィングルームにて。



明日風「ねぇねぇ葛西司令官。所長って、一体どんな人なの? みんな怖がってるみたいだけど」

光牙「あ?… そうだな…一言でいうと、バケモンだな」

明日風「バケモン?」



迎「大学と大学院を飛び級で卒業した、素粒子物理学の権威」

有菜「そしてあっという間にこのTGSLの所長に就任」

夢見「私たちのモーターコアは、あの人のおかげで、 より力が発揮されるように改良されたの」

陽乃「語学も堪能で、海外からの講演依頼も多数」

タマ「あと、おっぱいがでかい」

明日風「へ~。そんなにすごい人なんだ」



光牙「あぁ。たしかにすげ~人なんだが、 天才は1本ネジが飛んでるっつ~か…。 いったん研究者としてのスイッチが入ると、暴走するクセがあってよ。 ま、ズバリ、変人だな」

▲光牙の背後に、玲子が立っている



玲子「だぁーれが、変人ですって? 光(こう)ちゃぁ~ん?」

光牙「ギクッ!! その声は…!」



迎・タマ・有菜「玲子様!」

玲子「まったく。いつから光ちゃんは口が悪くなったのかしら。 小さい頃は『玲子さん、玲子さん』って、私の後ろばかり付いてきていたのに…」



明日風「へ~。光(こう)ちゃんにも可愛い時期があったんだね~」

タマ「昔のままの光(こう)ちゃんだったらよかったのにね~」

有菜「(笑いを堪えながら)こ、光(こう)ちゃん……。くくっ。 いつ聞いても笑える」

光牙「いつの話をしてるんだ! ったく…」

玲子「それがいつしか、野獣のような目で私を見るようになって…」

迎「い、いやらしい…」

タマ「うわぁ…」

陽乃「最低ですわ」

光牙「冤罪だ! いつそんな目をした!?」

玲子「まぁ光牙、冗談はこれくらいにして、 早速ミーティングを始めるわよ」

光牙「もう勝手にしてくれ…」



玲子「さてッ! 最近のみんなの訓練データを見させてもらったんだけどぉ。」
(徐々にトーンを上げていく、怒り口調に)
玲子「全ッ然だめね。みんなのシンクロ率が低すぎる。 私が開発したソウルモーターのブースト機能が 全く活かされていないじゃない!」

明日風「うわ~。めちゃくちゃ怒ってるよ…」

玲子「(冷静に過去を振り返るように) あなた達が理想のシンクロ率を出したのは、たった1回しかないの。」



玲子「そう。あれは明日風が私達と初めて出会ったときだったわ・・・・・・」


---回想シーン---

▲白のモーターコアを前に、光牙と玲子が話している



光牙「この前の適正テストでも、見つからなかったのか?」

玲子「どうしてこうも、白の適合者だけが見つからないのかしら?」

光牙「これでかれこれ何人目だ?これだけ全国探していないんだ。 もしかして、もう見つからないんじゃないか?」

玲子「でも、不思議なんだけど、この白のモーターコアが 時々反応することがあるの」

光牙「ってことは、レース場の近くに適合者がいるってことか?」

玲子「まさか…ね…」



◆明日風が売店『楽』にてアルバイト中。
 店にアジフライを買いに来た客と談笑している



明日風「おっちゃん!アジフライ3個毎度あり! 今日も楽(らく)のアジフライは最高に美味しいよ!」

客A「おっ、明日風ちゃん。いつもお母さんの店を手伝ってエライな」



明日風「えへへ~」

客A「そういえば、最近水面で訓練してる女の子達をよく見かけるけど、 あれはなんだい?」

明日風「あー、あれはね、『ヴァルキリーチーム』っていって、ユミルやイバスと戦うための特別チームなんだって」

客A「ふ~ん。あんな若い子たちで、敵を倒せるのかね…? ところで…明日風ちゃん。今日のレースは何号艇が来ると思う?」

明日風「そうだなー。次のレースは、3号艇かな!」

客A「3号艇? たしか…西舘 健にしだて けん選手だったか? でもなー。この前フライングしたしなー」

明日風「今度は絶対大丈夫だって! 江戸川ケンちゃんを信じてみてよ!」


◆突如、水面側から悲鳴が聞こえる



客B「きゃー!」

客C「なんなの!? あれは!?」

客D「に、逃げろーー!」

◆水面に大きな渦が広がり、中心から巨大な“ユミル”と多数の“イバス”が出現する

客A「こりゃあいかん! 明日風ちゃん! 早く逃げるぞ!」

明日風「う、うん」

◆ヴァルキリーチーム5人のもとに、光牙から通信が届く



光牙「ヴァルキリーチーム聞こえるか!? 大型のユミルと、多数のイバスの出現が観測された。 直ちに迎撃に当たる! これが初めての実戦だが、お前ら、行けるか!?」

5人「はい!」

▲5人は戦闘に向かう

◆光牙、玲子はモニタールーム



玲子「ちょっと光牙! モーターコアは6つ揃って初めて威力を発揮するの! 白の適合者がまだ見つかっていないのに、 5人で戦いに行くのは危険だわ!」

光牙「そんなのはわかっている! しかし、メイルストロームを消滅させられるのは、 ヴァルキリーボートに乗れる、あいつらにしかできないんだ!」

玲子「でも…」

▲5人の戦闘シーン。5人は苦戦している



有菜「くっ…。だめた、全然出力が上がってこない… これじゃ全く攻撃できないぞ!」

タマ「え~い! ちょこまかと鬱陶(うっとう)しいのよ!」

夢見「み、みなさん! 落ち着いてください!」

陽乃「そうですわ。みなさま落ち着いて、マニュアルの125ページ通りに攻撃すれば、結構当たりますわよ」

迎「いや。今はそんな余裕はないかと…」

◆そこへ、ユミルの攻撃が迎に当たり、吹き飛んでしまう

(咆哮音)~(打撃音)



迎「きゃあ!」

タマ「迎!」

光牙「大丈夫か!?」

有菜「迎が敵の攻撃を受けた!光牙、このままだと、わたしらも持ちこたえられない!」

光牙「くそっ! 厳しい展開だな…」

玲子「やっぱり、ボートは6艇揃わないとダメなのよ!」


▲ボートに乗ったまま気を失った迎を明日風が見つける



明日風「あ!? あれは、ヴァルキリーチームの子!」

迎「くっ…」

明日風「このままじゃあの子が危ない!待ってて、今、助けに行くからッ」


▲明日風が危険を省みず、水面へ飛び込み、迎の元へ向かう

(水に飛び込む音:バッシャーーン)


光牙「なんだ! あの子は! 水面に飛び込んだぞ! 無茶なことしやがって!」


▲明日風が、迎を揺り起こす



明日風「ねぇ! 大丈夫!? しっかりして!」

迎「うっ…うん…。あれ? あなた…」

明日風「よかったー。気が付いた」

光牙「迎! 聞こえるか! 迎!」

迎「はい…司令官」

光牙「迎! 気が付いたようだな。敵が迫っている! 今すぐその子を乗せて避難させろ!」

迎「司令官!? どうして一般人の子が私のところに…!」

光牙「いいから、とにかくその場を離れるんだ!」

タマ「迎、早く逃げて! すぐ後ろに敵が…!」



迎「…っ! ダメッ、逃げ切れない…!」


▲明日風、叫ぶ

明日風「いやぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



◆すると、徐々に明日風の胸が白く光り出す

明日風「(ゆっくりとつぶやく感じで) この光は、なに? 胸が苦しくて、ドキドキする…。」


◆研究所内に保管されていた白のモーターコアも光り出す



玲子「これは!?」

光牙「なんだ!? なにが起こっている!?」

玲子「白のモーターコアの数値が異常なスピードで上昇しているわ!」

光牙「なんなんだ、この光は!?」


◆光が最高潮に達したとき、白のモーターコアは明日風の胸に転送される



玲子「モーターコアが…消えた…っ!?」



明日風「んっ…! これは…? 体が… 熱い…」

迎「…っ! なぜ、この子の胸に白のモーターコアが?」

明日風「え? 白い… モーターコア?」

光牙「モーターコアが…転送された…だと?」


◆明日風、迎の周囲の敵(イバス)が白い光で消えていく

夢見「あっ! 司令官! 迎ちゃん達に迫っていた敵が、白い光にはじき返されています! しかも、私たちのシンクロ率が急上昇しています!」

▲狂ったように喜ぶ玲子



玲子「このシンクロ率は…! フフ。フフフフフフ。あーっはっはっは!!やったわ!! やっと見つけた! 彼女が白の適合者よ!」

光牙「なんだと!? あの女の子がそうなのか…!」

▲急激に上がったシンクロ率に、他のメンバーが驚く



有菜「なんだ!? 出力が急に上がってきているぞ!?」

陽乃「まぁ、ほんとに」

タマ「ちょ、ちょ、ちょっと司令官! どうなってんの!?」

光牙「どうやら、迎のボートに乗っている女の子が白の適合者らしい…。 だが、今は考えてる余裕はない! これは反撃のチャンスだ! 迎、少々強引だが、その子を乗せたまま戦線に復帰できるか?!」

迎「で、でも、彼女は訓練もろくに…!」

光牙「わかっている。しかし、現にシンクロ率は確実に上昇している。 今はその子に賭けるしかない」

迎「…わかりました」

迎「ねぇあなた! 私にしっかり掴まっていて!」


(ボート発進~加速音)
▲迎がボートを操縦、後ろに明日風が乗っている



明日風「え? あ、ちょっ、ちょっと! う、うわぁーー! ボートなんて乗ったことないのに…うわあーー!」

迎「ちょっと! 暴れないでよ!」

明日風「だ、だって! ボートってこんなにスピード出るの?」

迎「みんな、このまま攻撃に行くわ」



タマ「その子が、白の適合者?」

有菜「タマ、そんな会話してるヒマなんて、なさそうだぜ!」

陽乃「まぁまぁ。後で“ちゅ~にんぐ”して差し上げますわ」

夢見「みなさん、敵を攻撃しつつ、フォーメーションを組み直しましょう。 私の分析では、シンクロターンが決まれば、 この渦を消滅できるはずです!」


▲それぞれがイバスを倒していく



夢見「えい!」

(ドォォォォーーーーン)

タマ「とりゃー!」

(ドォォォォーーーーン)

陽乃「ハァーーッ!」

(ドォォォォーーーーン)

有菜「うおりゃー!」

(ドォォォォーーーーン)


▲明日風が後ろで暴れるため、迎だけうまくボートを操縦できない



明日風「いけ、いけぇー!」

迎「ちょ、ちょっと! だから暴れないでって言ってるでしょ!」

明日風「おりゃ、おりゃー!
なんかちょっとボートのスピードにも慣れてきたよ!」



夢見「司令官!やはり、彼女の白い光で周りのイバスがどんどん消滅しています。 残るは、渦の中心にいるユミルだけです!」

有菜「おい、迎! ターンが乱れているぞ! 集中しろ! これじゃあみんなでシンクロターンが決められないぞ!」

迎「この状況で無理言わないでよ…」

タマ「正直、私の体力もそろそろ限界だわ!」

光牙「迎! 後ろの子と呼吸を合わせろ!」

迎「りょ、了解」

迎「あなた、最後くらいは私の動きに合わせてよ!」

明日風「よしきた!」



光牙「OK! それじゃ、全員で最高のシンクロターンを決めてこい!」



明日風・迎「いっけーーー!」

全員(夢見除く)「シンクロターーーーーーーーン!!」

◆全員でのシンクロターンが決まり、メイルストロームは消滅


光牙「やったか?!」

夢見「メイルストロームの消滅を確認! 敵反応、完全に消えました」

光牙「了解。ヴァルキリーチームは直ちにピットへ帰還せよ。 救護チームは周囲にケガ人が居ないか確認してくれ!」

◆全員ピットに戻ってくる



明日風「ねぇ、ねえ、もう敵はいなくなったの?」

迎「あなた! 水面に飛び込んでくるなんて、無茶よ! 一体何を考えているの!」

明日風「だって、ほっとけないよ!」

タマ「ちょっと、迎。 せっかく初めての戦闘から無事に戻ってこれたんだから、 ケンカなんてやめなさいよ!」

▲そこへ、玲子が猛烈な勢いで走ってくる
(どどどどどど・・・・・・)



玲子「み、み、見つけたわーー! 白の適合者!! 絶対に逃がさないわ!! 私の理論は間違っていなかった、最高のシンクロ率よーー!」

▲玲子が明日風に抱きつき、玲子の胸で明日風が窒息しかける

明日風「うわっ わっぷ!! い、息が…」

陽乃「玲子様! ずるいですわ! わたくしも!」

▲陽乃も抱きつきに参加し、明日風が虫の息に

明日風「んーー!! んーー!」

(靴の音)
▲光牙が少し遅れて合流

光牙「おいおい。そのへんにしといてやれ」

▲明日風が窒息から解放される

明日風「げほっ! げほっ! た、助かった~」

▲明日風、迎、司令官が初めて対面



光牙「俺はこのチームの司令官、葛西光牙。 君が最後の6人目、白の適合者だ。 つまり、君は今日からヴァルキリーチームの一員だ。」

迎「私は、船堀迎。ねぇ、あなた、名前は?」



明日風「私? 私の名前は、小松川明日風!」


---回想シーン終了---


◆現在。ブリーフィングルームにて



玲子「はぁ~。あの時のシンクロ率が忘れられないわ~。 あれをいつでも出せるようにしておけば、多くの人の命が救えるの。 だから、あなたたちはしっかり訓練に励む必要があるのよ。」

全員「はいっ!」



明日風「もっと訓練して、たくさんの人を助けられるように ならなくちゃ!」

迎「えぇ! そうね」

夢見「うん! がんばろう」

タマ「ま、日々の訓練は無駄じゃないってことよね」

有菜「よーし! じゃあこれから早速はじめるか!」

陽乃「善は急げ、ですわね」



光牙「あ、いや…、おれは…これからビ、ビ、ビールの時間なんだけど…」

玲子「光ちゃぁ~ん? 昔、一緒にお風呂に入ってた時の話をしちゃってもいいのかしらぁ?」

光牙「んーー!! 張り切って訓練しような! みんな! 今すぐ再開だー!!」



全員「おー!!」


【完】